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https://www.kyobun.co.jp/news/20230714_06/ 【ウクライナと学ぶ】平和を考え続ける MISIAさんの思い  平和について考え続けよう──。『Everything』『アイノカタチ』『明日へ』など、 世代を超えて愛される名曲の数々で知られる歌手のMISIAさんは、この1年ほど紛争で苦 しむウクライナの人々を支援するため募金やチャリティー活動に取り組んできた。その 根底にあるのは、平和への祈りだ。MISIAさんがウクライナの人々に寄り添い、子ども たちに託した平和への思いを聞いた。 知らないふりをしてライブなんてできない ──ウクライナを支援するプロジェクトを立ち上げたのは、何がきっかけだったのでし ょうか。  これまで一緒にライブをつくってきてくれたメンバーの一人に、ウクライナのダンサ ーがいました。以前からずっと連絡を取り合っていたのですが、ロシア軍侵攻のニュー スが飛び込んできたのは、ちょうど2日後に控えた名古屋でのライブの準備をしていた ときでした。最初は「危なくなったら逃げるから大丈夫。何とか家族は避難させたい」 と話していたのですが、あっという間に身動きが取れなくなってしまいました。どうな るのか本当に心配で、そういう気持ちを抱え込んで知らないふりをしてライブに臨むな んてできないと思いました。  いつも私は、聴いてくれる人に心から楽しんでもらいたいと思って音楽をしています が、その幸せを突き詰めていくと、平和でないとそれは実現できないということに気付 かされました。  去年はちょうどデビューして25年という節目の年でした。これまで私がこうして自由 に歌い続けることができたのは、それを聴いてくれる人や曲をつくってくれる人、バン ドメンバーをはじめいろんな人のおかげですが、何よりも私が今いる日常に戦争という ものがなくて、平和の中で生きてこられたからこそではないか。世界中のみんなに、こ んな素晴らしい時間を過ごしてほしいと思ったのです。  みんなの幸せを心から願って歌っているのだから、今のこの状況に対してウクライナ で苦しんでいる人々のためにみんなで平和を祈ろう。そして私たちができることをして いこう。そう思って、ライブでも「花はどこへ行った」という反戦歌をカバーして歌い ました。そして募金を呼び掛けたり、影絵作家の藤城清治さんや先日亡くなられたアー トディレクターの信藤三雄さんら日本のアーティストの協力も得て、チャリティーTシ ャツをつくったりしてきました。  私たちにとって本当に身近な仲間に、危機の中で苦しみ悲しんでいる人がいた。彼ら の声を届けることが私たちのできることの一つだと思ったこと、そしてその根底にみん なが幸せになってほしいという思いがあって、その延長線上にあった活動だったのだと 思います。そしてこのプロジェクトは私一人では決してできませんでした。 子どもが幸せであることこそ ──募金やチャリティーで集まった3000万円を、ウクライナの子どもたちやウクライナ から日本に避難してきた人を支援する団体、ユニセフなどに贈ったのは何か理由がある のでしょうか。  私の事務所にも、ウクライナ・キーウ出身のダンサーであるオレクシー・グザーさん が所属しているのですが、集まったお金をどこに届けるかはオレクシーさんとそのパー トナーが考え、私たちにその団体を紹介してくれました。彼らもまた、子どもたちや障 害のある人など社会の中で弱い立場にある人の支援が大事だと思っていたのです。  多くの人が幸せであるためのサポートとは何か。それを考えたときに、子どもが幸せ かどうかがすごく大切だと思いました。なぜなら、子どもの状況を見ればその社会の大 人の状況もよく分かるからです。子どもが苦しんでいる社会というのは大人も苦しんで いますし、子どもが飢えていれば大人も飢えているのです。逆に言えば、社会の中でも 弱い存在でもある子どもが幸せであるならば、きっと多くの人が幸せなはずです。そし て子どもは私たちにとって未来そのものです。未来をより良くするためにも、子どもの 視点に立って子どものためにできることを模索していくことが、結果としていろいろな 人のサポートに目を向けることにつながると思いました。  長崎で育った私は子どもの頃から平和教育を受けてきましたし、祖父から戦争の話を 聞いたりして、今思えば平和について考える機会がとても多くありました。でもその中 で、自分の身に引き寄せて戦争を捉えることができたのは、自分と変わらないような子 どもが亡くなっているということを知ったときでした。それまでは戦争とは大人の問題 で、どこか遠い世界、遠い国の話だと思っていたのが、ぐっと身近なこととして考える ようになりました。  だからきっと私の想像する平和のイメージって、子どもが安心して暮らしている世界 で、子どもたちが「こんなふうになりたいな」「明日はきっとこんないいことがあるか な」と未来に希望を持ちながら生きていく姿なのですね。 考え、話を聞き、議論する力 ──ウクライナで起きていることもまさに、日本の私たちはどこか遠い国の出来事のよ うに感じてしまいます。  以前アフリカの支援活動を通じて学んだことを『ハートのレオナ』という絵本にして 、それを基に大学生に講演したことがあります。そのとき「遠いアフリカのことを、ど う身近な問題として捉えればいいですか?」と聞かれました。でも、アフリカは決して 遠くないんですよ。例えば、ルイボスティーを飲んだことはありますか。あれは南アフ リカでしかつくれないものです。十円玉を持っていますよね。十円玉の素材である銅の 多くはザンビアで採れたものです。たこ焼きは好きですか。日本で輸入されるタコの7 割はアフリカ産です。そうやってアフリカがどれだけ日本とつながっているかを考える と、こんなに近くにアフリカがあって私たちが助け合って生きていることに気付かされ ます。そしてその助け合いが持続可能なものになっているかどうかを考えることは、決 して遠い国の話ではないですよね。  この前たまたま、フィンランドで行われている「現象ベース学習」の本を読みました 。例えば数学でも、実際に社会の中にあるものを題材にした計算問題に取り組むといっ たように、今の世界で起きていることを教材にして学んでいくという考え方のことです が、自分が生きている社会とその外にある世界がどう結び付いているのかを感じながら 学ぶと、ただの勉強とは全然違うと思うんです。  これは平和について学ぶときと似ているなと思いました。私は、紛争と環境問題や貧 困問題などはどこかでつながっていると考えています。環境問題や貧困問題が解決でき たら、もしかしたら紛争もなくなるのではないかとさえ思います。  どうしたら武力を用いずに問題を解決できるのか。一つは私たち一人一人が考える力 を持つことが大切です。そして、それと同じくらい人の話に耳を傾ける力を持つ。その 上で、けんかではなく議論できる人になることです。  社会や学校にはいろいろな人がいます。その人たちの考え方に触れながらインクルー シブな環境で一緒に暮らしていく。そうした中で子どもたちが学べれば、子どもたちは いろんなことを感じて、きっと平和というのは多様な生き方や考え方、人々を受け入れ て共に楽しく生きていくことなんだと学んでくれる。そうなれば、より良い未来につな がるんじゃないでしょうか。それを学べる社会や学校は大きな可能性のある場所だと思 います。 ──そういう意味では、音楽もまたいろいろな人が共感でつながることができるツール なのではないでしょうか。  アフリカに行くと、サッカーと音楽は「共通言語」になっていて、言葉は分からなく てもそこで歌われている歌をまねすると、子どもたちが寄ってきてすぐに仲良くなれま す。一緒のリズムを刻むだけでも喜びを分かち合うことができます。音楽をはじめとす るエンターテインメントによって、私たちはお互いを分かり合うきっかけを見いだせる のかもしれません。  インターネットが発達して世界はより近くなり、翻訳ツールなども登場して言語の壁 もなくなりつつありますが、言葉以外の共通言語となるものを体得しておくと、すごく 豊かにコミュニケーションを取ることができます。つい戦争の話や貧困、環境問題につ いて私たちは難しく議論してしまいますが、根本的には人がより幸せになることを語り 合いたいのです。そういう心の部分にエンターテインメントはダイレクトに響くので、 対話のための大きな一歩になります。だからこそ私たち表現者は、その力が悪用されな いように、誰かを傷つけないように気を付けなければならないとも言えますね。 いろんな場で学び、考え続けよう ──日本も間もなく終戦から80年を迎えます。どのように平和の大切さを伝えていくか が課題になっています。  平和教育を受けてきて感じたのは、伝え続けることの大切さです。どうしても記憶や 体験は時間と共に薄れていきますが、それを記録して何世代も語り継いでいく。それが しっかり形になっているのは、すごいことだと思うのです。  長崎の原爆の爆心地から500公尺の場所にある城山小学校では、どの子どもたちもそ の小学校を訪れた人に原爆のことを説明できるそうです。そういうカリキュラムもしっ かり整っていて、実際に私もその小学校を訪れて子どもたちと話をしました。  そこで私は「戦争と平和って何だと思う?」と、ちょっと漠然とした難しい質問をし たんです。するとみんな口々にちゃんと自分の考えを語ってくれました。中でも印象的 だったのは「平和っていうのは自由に笑ったり怒ったりできること、戦争はできなくな ること」という答えで、的確だなとはっとさせられました。こんな難しいことを自分の 言葉に落とし込めるのは、すごいなと驚きました。  学校が百点満点である必要があるのかというと、よく分かりません。私自身も学校以 外のところで先生以外の人から学んだことはたくさんあります。家族や友達、近所の人 、習い事、あるいは旅先であったり、街中で叱られたり、そういうことも含めて学びだ と思うのです。子どもたちにとって、学校だけじゃなくて、いろいろなところで学びが ある世界こそ素晴らしい。そして、先生もまた子どもと一緒にいろんな学びを楽しんで ほしい。そうすれば学校もきっと、もっと楽しい場となるでしょう。  もしも平和に明確な答えがあったなら、とっくに世界平和は実現しているはずですが 、現実はそうではない。だから私たちはこれからも平和について考え続けなければいけ ないのです。それが分かることだけでも、きっと大きな学びなのではないか。私はそう 思います。 -- https://www.facebook.com/MISIAnews MISIA 情報彙集應援專頁 --



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