MISIA 板


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https://tinyurl.com/574cyeht 『Mother Father Brother Sister』から窺い知る日本音楽界における MISIA の功績 OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。今 週はMISIAの『Mother Father Brother Sister』を取り上げる。デビューシングル「つ つみ込むように…」のヒットを受けて、デビューアルバムにしていきなりダブルミリオ ンを記録した本作。発売から20年経った今聴いてみると、彼女の歌唱力が当時から抜き ん出たものであったことはもちろん、1990年代後半の音楽シーンの状況やその中での彼 女の立ち位置などにも思いを馳せることができる感慨深い作品であった。 祝、レコ大・最優秀歌唱賞受賞 2018年、MISIAが日本レコード大賞・最優秀歌唱賞を受賞した。20年目での初受賞であ る。5オクターブの音域を誇る圧倒的な歌唱力でデビューアルバムからいきなりミリオ ンセールスを記録。今もアリーナクラスの会場をソールドアウトさせることも何ら珍し くないアーティストだけに、個人的には遅かりし受賞である感が否めないが、“所謂お 茶の間での露出を踏まえたら、まぁ、これくらいのタイミングとなるのかもしれないな ”と思ったりもする。 とにかくMISIAのテレビ出演は極端に少ない。トーク番組などへの出演もほとんどない が、歌番組への出演も数えるほどである。ライヴの生中継を除けば、最初に歌番組へ出 演したのはデビューから実に14年後。2012年の『NHK紅白歌合戦』だったというからち ょっと驚きだ。『NHK紅白歌合戦』は3度出場しているが、そのうちのひとつである昨年 の『NHK紅白歌合戦』にしても、2015年以来、3年振りだっだ。最優秀歌唱賞受賞という ことで昨年12月30日、新国立劇場のステージから「逢いたくていま」と「アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)」を歌う姿が中継されたが、これが民放初ステージだったとい うのも不思議なくらいである。端からテレビ出演を考えていないタイプのロックアーテ ィストは別にしても、同期/同世代でこれほどまでにテレビ露出のないシンガーは稀だ ろう。その昔、『ザ・ベストテン』への出演を拒否したシンガーのほうがよっぽどテレ ビで歌っていたような気がする(気がするだけで未調査)。 TVドラマの主題歌も数多く手掛けているので、テレビ媒体とまったく無縁というわけで はないものの、彼女はほとんどテレビに依存することなく、そのポジションを確立して きたアーティストとは言える。そんなMISIAが一時期に比べて視聴率は低下したとは言 え、いまだ年末の風物詩的テレビ番組でもある日本レコード大賞において最優秀歌唱賞 を受賞したというのは、彼女のその確かな歌唱力が広くお茶の間へ周知した証拠でもあ ろう。3度目の出場となった昨年の『NHK紅白歌合戦』では、レコ大に続いて「アイノカ タチ」と、サプライズでデビュー曲「つつみ込むように…」を歌ったが、それを司会の 嵐・櫻井翔が「高校生の頃にフラッシュバックした」と語っていたのも象徴的。国民的 グループのメンバーをしてそう言わしめるのだから、MISIAの歌とヴォーカリゼーショ ンもまた国民的なものとなったと言ってもいいのではないかと思う。 R&Bを日本に根付かせた礎 さて、その「つつみ込むように…」も収録されているMISIAの1stアルバム『Mother Father Brother Sister』。改めて聴いてみると、かなり大衆を意識した作品のように 思う。いや、大衆に支持されなければ売上が250万枚を超えるわけはないので、そりゃ そうなのだろうけれども、彼女の音楽的バックボーンであるゴスペル、ソウルはもちろ ん、それをベースにしたコンテンポラリーR&Bにしても、本作が発売された1998年頃は まだメインストリームのものとは言い難かった。本作が発売された当時は第三次バンド ブームの渦中であり、セールス上位を占めていたのはB'z、GLAY、L'Arc~en~Ciel、 LUNA SEAらのロック勢。唯一ブラックミュージック寄りだったのは安室奈美恵だが、 1997年の4thアルバム『Concentration 20』はロック、デジタル色が強いと言われてい る。コンテンポラリーR&Bが広く一般に入り込むのは1999年。言わずと知れた宇多田ヒ カル『First Love』の特大ヒットによるところが大きく、クラブシーンはともかくとし て、あの頃、そのジャンルを一般層に届けるにはまだハードルが高かった。いかに MISIAのポテンシャルが高く、シングル「つつみ込むように…」がヒットしていたとは いえ…だ。 今回『Mother Father Brother Sister』を聴いて感じたのはそこである。どうしたらス ムーズにMISIAというアーティストの本質を一般層に届けることができるか。制作サイ ドがそこを丁寧に考えた様子が伝わってくるような作りであると思う。それが上手くい ったからこそ本作はダブルミリオンを記録したのだろうし、そして、それがコンテンポ ラリーR&Bという音楽ジャンルを日本に根付かせる礎になったという見方は、あながち 間違いではなかろう。 真摯な姿勢が垣間見える歌唱 M1「Never gonna cry! strings overture」はインスト。ストリングスのみの構成だが 、サウンドはわりと激しめ。それでいてちゃんとポップというのは所謂オープニングSE としての役割は十二分だろう。激しいピアノで始まるM2「K.I.T」へのつなぎとしても ばっちりだと思う。その「K.I.T」は如何にもクラブっぽいリズムで、硬めの音が当時 っぽい。ビートを前に出すのが当時の主流だったというのは前述の通り。全体の聴き応 えとしては、のちにシングル「FLYING EASY LOVING CRAZY」(2008年)でコラボレーシ ョンした久保田利伸の初期サウンドにも近い印象で、このファンキーさはわりと親しみ やすかったのではなかろうか。何よりもインパクトがあるのはド頭の超ハイトーン。い きなり飛び出すので、彼女の声を期待していたリスナーには“待ってました!”だった ろうし、1作品として客観的に見ると、この人がどんなシンガーであるのかをしっかり と示した作りではあると思う。言葉ではなく、声で所信表明したようでもある。M3「恋 する季節」のイントロでのスキャットもそう。ヴォーカリストのアルバムであることが はっきりと分かる。また、この曲は2ndシングルのカップリング曲でもあるので、シン グルでMISIAを知った人にも馴染みがいいのではなかったかと思われる。 そこから続く、M4「I'm over here ~気づいて~」がいい。スクラッチノイズが入った サウンドは完全にクラブ仕様で(あれはアナログレコードで出したものではなく、電子 音かもしれないが…)、若干ラップっぽいAメロでの歌唱、ソウルフルなコーラスを含 めてわりと攻めに転じたようにも見える一方で、歌い方はとても丁寧な印象だ。語弊の ある言い方かもしれないが、フェイクに逃げてないと言ったら分かってもらえるだろう か。もしかするとライヴではそういう歌い方をしているのかもしれないが、このテイク は言葉ひとつひとつをしっかりと伝えようとしているような歌唱である。クラブ系のサ ウンドに乗せて、独り善がりのヴォイスパフォーマンスをひけらかすような凡百のシン ガーとは明らかに違う、彼女の真摯な姿勢が垣間見えるようで、今聴いても、とても好 感が持てるところだ。 洋楽的な楽曲とルーツ音楽の露呈 M5「interlude #1」、M9「interlude #2」という文字通りのインタールードに挟まれた M6「Tell me」、M7「キスして抱きしめて」、M8「Cry」はいずれも洋楽チックだ。オフ ビートのリズムが特有のグルーブ感を生んでいるM6「Tell me」。2本のアコギのアンサ ンブルに同期が重なるM7「キスして抱きしめて」。決してテンポは速くないが、エレキ のカッティングとベードラの刻みが楽曲にドライブ感を与えているM8「Cry」。サウン ドのタイプは異なるものの、そのヴォーカルは英語的な響きがある。英語詞のあるM6「 Tell me」とM8「Cry」は当然としても、全編ほぼ日本語詞のM7「キスして抱きしめて」 にしてもメロディーへの言葉の乗せ方は和風ではない。極端に言えば、M4「I'm over here ~気づいて~」とは対極にある感じだ。M7「キスして抱きしめて」は本作で唯一 MISIA自身が作曲したナンバーなので、彼女が好む歌い方は(少なくともデビュー時は …だが)こういうタイプなのかもしれない。興味深いと感じたのは、例の超ハイトーン ヴォイスの扱い。M6「Tell me」のアウトロとM8「Cry」のサビでそれを確認できるのだ が、前者のそれはフェードアウトする中で響き、後者はそれほど派手な絡みを見せない 。さらに、M8「Cry」のアウトロのハミングではフェイクを利かせているのだが、これ もフェードアウトしている。明らかに抑え気味なのだ。ゴスペルにしてもR&Bにしても 何ら問題なく歌えるシンガーであることは示しつつも、それに特化しすぎないことも表 しているようでもある。 波打ち際の音から始まるM10「小さな恋」は、かわいらしいメロディーを持つナンバー だが、本格的なコーラスワークにソウルを感じさせる佳曲。《だって チク チク チ ク 心が痛みだす様で》や《だって ポロ ポロ ポロ 涙がこぼれそうで》などリズ ミカルな歌詞もポップさを助長している。M11「陽のあたる場所」はさすがに2ndシング ルとなるだけのキャッチーなサビメロを擁しているが、全体としては実にソウルテイス トあふれる楽曲と言える。ワウワウとしたギター。抑制を効かせつつもしっかりと楽曲 を支えるブラスとオルガン。何よりもその声量を示すヴォーカリゼーションはリミッタ ーを解除したようでもある。そう、このアルバムはこの辺りからルーツミュージックを 隠さなくなってくるのである。本領発揮という言い方は少しおかしいかもしれないが、 ニュアンスとしてはそれに近い。ストリングス、ピアノ、ブラスを配したM12「星の降 る丘」は、のちの大ヒット曲「Everything」にも通じるような壮大なタイプのバラード だが、この歌も断然ソウルフル。レンジの広さを示すサビの後半や大サビの歌唱は、さ すがとしか言いようがない素晴らしさだ。 聴く者の気持ちを昂ぶらせる終盤の流れ そして、本作はM13「つつみ込むように…(DAVE“EQ3”DUB MIX)」へと辿り着くのだが 、この流れは完璧と言っていいと思う。イントロで例の超ハイトーンが聴こえてくると 、気持ちの高ぶりを抑えられない。ガンアガりである。ほとんどエクスタシー状態を生 み出すと言っていい。シングル曲はアルバムの2曲目に置くのが定番であって、アルバ ムの曲順をパッと見た時、“ヒットシングルをなぜこの位置に…?”との思いがチラリ と頭をよぎったものだが、これはこれが大正解。120点と言っていい模範解答であろう 。中盤のM6「Tell me」とM8「Cry」とで超ハイトーンヴォイスが抑え気味だったのは、 もしかするとここで開放感を得るためだったのではないかと思うほどで、(実際のそう いう意図があったかどうかは定かではないが)完全に脱帽である。ここに収録されてい るのはアナログ盤のリミックスということだが、CDシングルよりもサウンドは比較的お となしめというか、過度なリミックスはされていない様子。わずかではあるがヴォーカ ルが前に出ているようなバージョンであることから、制作サイドの意思を感じさせると ころでもある。 バックボーンの明確な露呈 M12「星の降る丘」~M13「つつみ込むように…(DAVE“EQ3”DUB MIX)」には大団円感も あって、ここでアルバムがフィナーレとなっても何ら問題はないだろうが、そこから M14「Never gonna cry!」というシングル「つつみ込むように…」のカップリング曲に 持っていくというのも結構面白い。M1が同曲のインストなので循環構造になっていると いうのもそうだが、注目はシークレットトラックとして別バージョンである「Never gonna cry! (JUNIOR VASQUEZ REMIX RADIO EDITION)」が隠されているところだ。もと もとモータウン風のナンバーであり──誤解を恐れずに言えば、The Jackson 5風のポ ップチューンで、彼女自身のバックボーンを露呈していると思われる「Never gonna cry!」なのだが、シークレットである“JUNIOR VASQUEZ REMIX RADIO EDITION”ではさ らに赤裸々に自らのルーツを取り込んでいる。パーカッシブなリズムと地声を強調した コーラスワーク。MISIAが幼い頃から親しんでいたというゴスペルがかなり本格的にフ ィーチャーされているのだ。シークレットトラックゆえにマニアックと言えばマニアッ クなアレンジもできたのは間違いなかろうが、アルバムの最後の最後に来て、かなり濃 い音楽性を見せつけている。 冒頭で、『Mother Father Brother Sister』はかなり大衆を意識した作品のように思う と述べたのはこういうところにもある。ポップでビートの効いたアルバム前半では、ヴ ォーカリストの作品であることを示しつつも、丁寧に歌唱した楽曲を置く。間口を広く 取ったイメージだ。そこから入って、中盤は洋楽的なナンバーを並べつつも、ヴォーカ リゼーションは過度に強調せず、後半でそれを一気に解放。そして、最後にMISIAとい うアーティストの背景と土台を躊躇なく晒す。ライトユーザーも聴きやすく、それでい てそこだけに阿ることなく、シンガーとしての本質はもちろんのこと、自らの音楽性も しっかりと打ち出す。さらに言えば、オープニングから聴いていくと、(変な言い方だ けど)それが自然と身に付くような構成だ。よくデビューアルバムはよくそのアーティ ストを紹介する名刺代わりと言われるが、『Mother Father Brother Sister』はMISIA を紹介するにおいて、この上なく優れた名刺代わりであった。 -- https://www.facebook.com/MISIAnews MISIA 情報彙集應援專頁 --



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