作者Jerry (中肛丁)
看板MakiHorikita
標題[新聞] 映画『蜩の記』
時間Fri Oct 10 11:43:06 2014
http://www.sanpo-pub.co.jp/column/akibanote/20141009.html
映画『蜩の記』 2014/10/09
豊後・羽根藩。藩主の側室との不義密通により切腹を命じられた戸田秋谷。しかし、
ちょうど秋谷が手がけていた家譜の編纂が中断することを惜しんだ藩主は切腹の刻限を
10年後と定め、家族とともに向山村に幽閉される。
家譜の編纂が進み切腹の期限まで3年となったところで、檀野庄三郎が家老中根兵右
衛門に命じられ家譜の清書を手伝うとして秋谷の家族とともに暮らすようになる。実は
、檀野は秋谷の監視役として送り込まれたもので、家老中根は家譜の中味と秋谷の最後
が気になっていたのだった。
秋谷と過ごすうちに檀野は次第に秋谷の生き様に傾斜していく。刻限を切られた命と
いう過酷な運命にもかかわらず恬淡と暮らす秋谷。武士としての本分を片時も忘れない
生き方。また、秋谷が大事にする妻との夫婦愛、そして娘と息子を含めた家族愛。そう
いう秋谷に檀野は惹かれていく。
また、秋谷の人となりを知れば知るほど、秋谷の不義密通などという事件を疑問に思
うようになる檀野。そして清書を進めるうちに隠された驚愕の事実へとたどり着く。
美しい映画だったというのがまずは第一印象。自然が美しい。家族が美しい。その美
しい自然と家族を奇をてらわないやさしいカメラワークが追う。映像美である。
出演は、戸田秋谷に役所広司、妻織江原田美枝子、娘堀北真希、檀野庄三郎には岡田
准一。役所秋谷は恬淡としていたし、岡田檀野はきまじめさが出ていた。堀北真希は初
々しさに好感が持てたしいずれも好演だった。
中でも良かったのは原田。武士の妻という自己を押し殺さなければならない境遇は覚
悟をしているものの、切腹の刻限が近づくにつれて妻織江の気持ちは揺らぐ。慟哭を隠
そうとする演技は秀逸だった。変な表現かもしれないが、武士の矜持を最もよく演じて
いたのは実はこの原田ではなかったか。
監督は小泉堯史。脚本も。とくに後半になって息詰まる展開は醍醐味。武士の所作な
どは手を抜かずに丁寧に表現されていたことにも感心した。
ただ、終わり近く秋谷と妻織江がしみじみと手を握り合うシーンは原作にはないサー
ビスで、ほろっとはさせられるものの面はゆくて私には蛇足に思えた。
実は、この映画は、封切り日の10月4日土曜日、それも朝の第1回目の上映を家内
と連れだって見に行ったのだが、家内は「男には面白かったかもしれないが、女には理
不尽なことばかり」と感想を漏らしていて、なるほど、現代の女性向けにはあういう演
出も必要なのだろうなと感じ入った次第。
原作は葉室麟の同名小説。直木賞受賞作である。
3年前にこの原作を読んで当時私は秋葉原日記というコラムに「端正にして凛とした
たたずまいがある」「命を区切られながら清廉に生きていく秋谷の生き様。そしてその
家族」「久々に心温まる時代小説を読んだというのが率直な感想」などと書いていた。
原作の小説と映画とを比べる必要は、毛頭ないのだが、ただ、映画は難しいと思った
。文章なら読者が勝手に膨らましていけばいいのだが、映画は直截すぎて時に観客の想
像を断るようなところがある。だからこそそこが映画のおもしろみでもあるのだが、こ
の映画はやや説明調になりすぎていたようにも思えて時にくどかった。
しかし、久々に丁寧につくられた面白いいい映画を見たという印象は残った。
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